2020・10
更新日:2020年10月20日
【日本語論文】
深見聡(2011) 環境保全と観光振興のジレンマー屋久島を事例としてー 地域総合研究 第39巻 第1 2号合併号
この論文では2011年に屋久島町議会が「屋久島町自然観光資源の利用及び保全に関する条例」案を全会一致で否決したことから環境保全と観光振興という間のジレンマの部分に焦点を当てて、世界自然遺産の目的と環境保全を指向するエコツーリズムの確立をはかるために留意する点について述べられていた。2011年時点で屋久島は世界遺産の保護の観点からは明らかに負荷量が危惧される状態に陥っている反面、観光振興という視点からは地域経済に一定量の波及効果が存在しているため全面的に自然遺産を保護する事も出来ない。筆者はエコツーリズムが確立されない理由の一つとして世界自然遺産とエコツーリズムというものの本来的な意味や役割がその地域で共有されていない事を指摘する。無論、そういった認知が必要な事もあるが早急にエコツーリズムを確立するシステムを構築させなければ、破壊され続けている自然は二度と戻らないようにも感じる。こういった事は持続的な観光開発を考えようとしている私たちも直面する問題のように思われる。
【英語論文】
THE IMPACT OF TOURISM DEVELOPMENT ON THE ENVIRONMENT IN CHINA
Jing Zhao, Shu-Min Li
Acta Scientifica Malaysia 2(1) (2018) 01-04
観光は世界最大ともいえる産業である。また、観光産業の発展は自然環境に対して、環境意識を高めるといったポジティブな影響と、交通の発展による公害などネガティブな影響を持っている。そのため、環境及び観光事業の開発を保証するためには持続的な観光開発が大きなカギを握っている。本稿では、自家用車での運転割合など、様々な観点から中国における観光が環境にもたらす正の影響と負の影響をそれぞれ分析している。結論として、ネガティブな影響を軽減するためにも、廃棄物のリサイクルや汚染物質の排出を最小化するシステムの促進などを心掛けるとともに、観光客の自然環境への意識を高めることが重要であるとしている。
【書籍】
2020 倉沢愛子 楽園の島と忘れられたジェノサイド バリに眠る狂気の記憶をめぐって 千倉書房
日本では楽園の島と人気のある、インドネシアのバリ島。自然豊かなこの島の海辺や道路の下には、たくさんの人の骨が眠っている。その数、50万骨異常ともいわれている。どうして、インドネシアの大量虐殺は起きてしまったのか、その原因が明かされる。1965年インドネシア全土で繰り広げられたスカルノとスルハトの権力闘争がきっかけで共産党主義者の大量虐殺は始まった。また、1965年9月30日に起きた陸軍将軍7人の襲撃事件で共産党主義者が事件を企てたとスルハトが民衆に伝えることで、普通の住民たちが隣人を狂ったように殺害をしていくようになる。
残虐な大量虐殺が起きたということを私は恥ずかしいことだが知らなかった。しかしこの本を読み、戦争や諍いや大量虐殺は宗教の考え方の違いによって起きるものなのではないかと考えた。また、権力のある人の発言がいかに周囲の人々をいい方向にも間違った方向にも導けるということを実感することができた。この大量虐殺を取り上げた“アクト・オブ・キリング”という映画をバリ島に訪れる前に見て理解をより深めたいと思う。
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