2022.6
【書籍】
みなかみイノベーション ー群馬県みなかみ町に見る中山間地の地域創生ー】
著者:鈴木誠二 2017年10月発行
〈要約〉
本書は、著者が群馬県みなかみ町で取り組んだ「地域イノベーション」(題して「みなかみイノベーション」)について書かれている。「みなかみイノベーション」とは、「明日の日本を支える観光ビジョン」で示される「農泊」の施策が、たしかな「成果」として実現したものである。
〈感想〉
群馬県民として、このようなプログラムが行われていることを本書を読むまで知らなかったことをとても恥ずかしく思った。みなかみ町は山間地域で、閉店したガソリンスタンドや学校や病院の廃墟が目立つような閑散とした地域である。人口の33.1%が高齢者を占めるみなかみ町で地域創生を行うのにとても興味を持った。「みなかみイノベーション」は、グリーンツーリズムの町としてブランドを確立するため、「農泊」の受け入れを推し進めている。最近Airbnbというレンタル宿泊施設の利用が需要を高めているが、この「農泊」はいわゆる農業体験付きのホームステイ体験を味わえる。みなかみ町に日帰りで観光する人に加え、宿泊サービスを提供することで観光収入を増やすことに成功した。また、この取り組みにより2012年には受け入れ可能な農泊受け入れ軒数が144軒、人数も13490人と、全国1位となった。このことにより住民が誇りを感じることが出来、県外からの注目度も増す。あまり観光地として魅力がない群馬県だが、このように観光業を盛り上げようとしていることに安心感を覚えた。
【日本語論文】
山本真嗣(2021)第36回日本観光研究学会全国大会学術論文集,pp. 185- 188
<要約>
2020年、新型コロナウイルスの流行によって観光業に大きな打撃を与えた。2020年に東京オリンピックが開催される予定だったため日本の訪れる外国人観光客は過去最多になるはずであった。しかしパンデミックによって観光客数が97~99%減少した。本論文は、携帯電話会社の提供する人口統計データを基に、従来は正確な把握が困難であった旅行者の属性や時間帯ごろの観光地の集客状況の推移を測定しコロナ禍がもたらした観光地への影響を調べたものである。2016年から2020年の10月までの調査で、大きな商業施設が集まるような駅周辺の観光客にあまり変化がなかったが、嵐山や清水寺などの寺院を含む観光地の観光客は減少したことが分かった。
<感想>
コロナ禍により、マイクロツーリズムなどの考えが台頭してきた。現在各地方自治体によって観光業を支えようと様々なキャンペーンが行われている。自由に行き来ができるようになると嬉しい。
【英語論文】
Chris Rojek,"Touring Cultures/Transformations of Travel and Theory"
<要約>
1980年代半ば以降、観光体験の文化的要素に焦点を当てたフェーズが出現した。これは、観光とその影響の両方の性質を再考することを必要とした。具体的には、観光の文化には、観光商品の文化の最大化、観光体験の再定義、観光の文化的影響への対処、業界自体の変化する文化への対処などが含まれる。観光の文化的側面を何よりも強調するニッチな形態の観光は、文化観光のことである。したがって、観光の文化は、文化に基づく対象を絞った観光から、マスツーリズムの意図しない文化的要素まで、さまざまな現象をこの論文は網羅している。
<感想>
観光体験を通して旅行地のことを深く知ることができるのだと思った。また、文化を学ぶこと自体がその国の細部まで知ることができると思う。
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