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2020・9

更新日:2020年9月20日

【日本語論文】

観光地ブランド評価に関する一考察

大井達雄(和歌山大学観光部)

ブランドとは個別の売り手もしくは売り手手段の在野サービスを識別させ競合他社の在野サービスを区別するための名称、言葉、シンボル、デザインあるいはそれらを組み合わせたものと定義されている。このようなブランド理論を応用したものが観光地ブランド、または観光地ブランディングである。本調査は各観光地に対して3つの視点から観光ブランド力を測定したものである。①ポジション 観光地のブランドの関わり方をマトリックスで表現することで視覚的に理解することを目的とする。②パーセプション 観光客の観光地に対する受容状況を分析したものである。③ポテンシャル 観光客が観光地を選択する時に重要視すると思われる項目に対する評価から見た推定される集客力の強さをあらわす。これらの調査の結果から課題として観光地の範囲、調査対象の抽出方法と継続的な調査の必要性がある。観光地ブランド調査に必要な構成要素として主に「自然資源」「観光資源の豊富さ」「宿泊施設」「歴史文化資源」「固有性・独自性」「雰囲気」の6つがあげられる。この論文から観光地のブランドや魅力は時代とともに変化するものであるため、変化に敏感になり時代にあったブランド・魅力を探求すべきだと思う。


【英語論文】

Chong, K. L. (2020). The side effects of mass tourism: the voices of Bali islanders. Asia Pacific Journal of Tourism Research25(2), 157-169.

 バリにおける大人数の観光は地元の環境、経済のみならず人々、遺産、文化や伝統までにも影響を及ぼしている。観光は経済的にもバリに大きな影響を及ぼしており、インフラの整備などを助長する一方、それよって地元の人々は環境問題や文化の喪失などのトレードオフが強いられる。また観光による収益の85%はバリ人以外に渡っている、観光の一極集中による格差の拡大など負の面も存在している。

 バリの地元の方々の大人数の観光客に対する声を聞くために、本稿は質的調査を行った。データコレクションは主にインタビューを用いた。

 現地の方々はインタビューにて、観光の増加に対する様々な意見を出した。観光の拡大による経済面での恩恵は大きいが、やはりゴミ問題や、マナー違反などに関しては遺憾を示している人々が多いことがわかる。また文化の喪失などをなくすために、州政府はローカルローカルコミュニティーにさらに観光に関わる手助けをすべきだ。またマナー違反に対するペナルティーの強化、3Rのさらなる促進などまだまだできることはある。


【書籍】

弱いつながり 検索ワードを探す旅

東浩紀

幻冬舎文庫 2016年

本書は哲学者であり、批評家でもある東浩紀氏によって書かれた本当の旅をテーマにしたものである。一度キリのかけがえのない体験こそが旅の醍醐味であるはずが、ネットの予測機能等によって最適化され画一的なものに変容されてしまっている。また、インターネットを利用する者は、リアルにおこることを閉じたインターネット上のコミュニティ内で共有するだけなので、個人の世界自体は広がっていない。これを打破するためには、ネットから完全に離れるのではなく、うまく利用することであるとしている。日本語ではなく、現地の言葉で検索することによる偶然性など、哲学を交えながらしっかりと示唆している。哲学が苦手な読者にこそ読んで欲しい入門書であると思う。


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