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CHJ

2021.07

更新日:2021年7月19日

〈英語論文〉Does Inbound Tourism Benefit Developing Countries? A Trade Theoretic Approach(2007)

Jean-Jacques Nowak, Mondher Sahli

Journal of Travel Research


この論文では、観光支出の変化が、生産高、所得分配、失業、国内労働力移動、そして最も重要な国民福祉に与えるマクロ経済的影響を検討するための統合的な貿易理論的アプローチを提供している。ここで得られた結果は、発展途上国における観光活動を否定するものではなく、従来文献で認識されてきた環境、社会、文化的コストに加えて、ある条件下では観光が経済的コストの原因にもなり得ることを示すものである。この結果は、ここで検討されているような経済においては、要素集約度の特定の構成、すなわち、農業よりも土地集約度の高い観光部門が必要であることが示されている。このような経済的コストの存在が証明されたことで、「観光は途上国の福祉向上に有効な手段である」という多くの文献で暗黙のうちに語られてきた一般的な仮定や主張が覆されることになった。政府が観光からの純経済的利益を高めるためには、2つの面で同時に行動する必要があることを示唆している。第一に、政府は、観光産業の継続的な発展に影響を与える一連の外部要因を評価することによって、どの程度の観光特化を達成したいかを決定しなければならない。 このようにして、観光開発に関する決定は、それがもたらす様々な効果についての理論的・経験的証拠に基づいて行われることになる。 第二に、政府は観光開発の代替案を国民経済の大きな文脈の中で検討しなければならない。 政府は、それぞれの観光形態がどのように経済に適合するかを検討しなければならない。 この論文を読んで、一概にインバウンドの効果を見るのではなく、インバウンドの効果を細かく分析する必要があると感じた。




〜持続可能な観光の要件に関する考察その概念形成における二つの流れを踏まえて〜

宮本佳範

日本語論文2021/07/18


持続可能な観光として企画される観光では 「少人数」「着地型」「体験型」「ソフトな」「自然とふれあう」といった特徴が強調されている 例をよく見かける。これらの特徴を持つことが “持続可能な観光”の要件といえるのだろうか。 少なくとも「自然とふれあう」ことでその自然 に大きなダメージを与えてしまうならば、その 観光は“持続可能”とはいえないだろう。島川 は「エコツーリズムやグリーン・ツーリズムのような観光形態を振興することが即サステイナブル・ツーリズムだという議論が展開」されている傾向があることを危惧していたが「少人数」「着地型」「体験型」等の特徴 を持つことだけで“持続可能な観光”であるか のように用いられている現状にも同様の危惧を 感じるのである。こういった現状は観光開発に 関わる人の認識の問題というより、むしろ“持続可能な観光”概念の持つ曖昧さこそが問題であると考える。持続可能な観光を推進するため には、この問題を直視したうえで、持続可能な 観光に求められる要件を本来の理念に沿って理 解することが重要である。持続可能な観光を行うために観光客としての自覚を持つ。正しい観光の仕方を身につける必要があるだろう。そのために私たちに何ができるか考えて行くことが私たちの課題である。


<日本語書籍>

宮内勝典(1995) 「バリ島の日々」


・概要

バリ島と言えば、陽の光に輝く海、青く澄み渡る空…「地上最後の楽園」とも呼ばれ、観光地として大人気の美しき島である。ただ、本書ではそういった観光地としてのバリ島ではなく、現代バリ・アートの数々を、バリの奥深さと崇高さをうたうエッセイとともに紹介している。島民全員が農民にして芸術家なのである。


・感想

本書は全体で90ページと比較的短い。だが、内容はとても濃かった。私自身、バリと言えばやはり観光地としてのイメージが強かった。だが、本書によって「芸術の島」としての一面が垣間見えた。本書のタイトルの通り、バリ島に住む人々の日々を味わいながら、バリ・アートも堪能することが出来たのだ。一度で二度おいしい。また、本書は1995年と約25年前に書かれているため、現在のバリ島の日々とは少し違うのかもしれない。だからこそ、自分の目で今のバリ島の日々を見てみたい、という思いが強まった。

時が熟した日に、いつか、かならず。


     

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