2020・6
更新日:2020年8月22日
【日本語論文】原真由子. (2016). バリ語とインドネシア語コード混在会話におけるバリ語 nggih, kenten, nika の機能. インドネシア言語と文化, (22), 21-33.
要約
バリ島では、公用語のインドネシア語に加えて島内独自の言語であるバリ語が話されている。大多数のバリ人はインドネシア語とバリ語を話すことができる。しかし、バリ語は現在では一般的に話し言葉として使われるにとどまっている。そこで、この論文ではバリ人の会話に着目をし、バリ語とインドネシア語を混ぜて話す際の特徴を研究している。それは、文章ごとに起こるだけではなく、各品詞ごとにも違いが表れている。さらに、バリ語の大きな特徴として挙げられるものが敬語表現が存在しているということである。この研究で使用されているデータは、バリのある大学の実験室内での2人の会話である。両者ともに女性である。まず、会話を構成する文章について見ていくと、インドネシア語からなる文章が293回と最も多く、次いで混在した文章、バリ語のみの文章といったものだった。次に、混在した文章に目を向けて、バリ語がどの役割を果たしているかを見た。1番頻度が高かったものが述語であり、次いで主語という感じであった。そして、混在した文章においてバリ語がどの品詞で使用されているのかも見ている。その内訳としては、指示代名詞が最も多く、次いで副詞、名詞であった。以上の結果から、バリ語は文章をまとめて言う時や、敬意を表したい時に用いられる傾向になることが明らかとなった。これを筆者は、バリ人がバリ語に対して持つバリ語らしさを表したものではないかと結論付けている。
感想
バリ語について詳しくバリ人がどのくらいの頻度で使用しているのかを知ることができる貴重な論文であると感じた。特に、日常会話という部分が私たちが普段旅行等で訪れても聞く機会が少ないので、興味深かった。さらにインドネシア語の中にバリ語が、少しずつ登場してくるというのも私たち日本人からすると、あまり想像できないような状況であることは間違いない。イメージを膨らませるために、私は勝手に日本国内での方言が混在した話者を頭に思い浮かべて読んでいた。この論文の改善点は筆者も論文内で述べているが、会話のデータが1つしかないところであると思う。これが複数の会話パターンで検証可能であるならば、非常に面白い結果が期待できると思う。そして、それはバリ語からバリ人の生活や人柄などの部分にまで読み解くことができるようになり、言語というものの価値が再認識されるように思える。
【英語論文】Astuti, N. N. S., Ginaya, G., & Susyarini, N. P. W. A. (2019). Designing Bali tourism model through the implementation of tri hita karana and sad kertih values. International journal of linguistics, literature and culture, 5(1), 12-23.
要約
この論文はTHK(トリ・ヒタ・カナタ)やSK(サッド・カリス)バリューのバリ観光への導入がどのように影響するかを見ている。詳しい内容は省くが、THKとSKの2つの概念はバリ島における社会と自然環境を保つための哲学であり、バリにバランスをもたらす地元の知恵である。THKは主教と社会と環境のハーモニー。SKはヒンドゥー教の教えで、自然界今日の保全の教えのことを言う。また暗に、水が最も純粋なものだと言う教えだ。
バリの近年の観光開発は経済発展をもたらしたが、バリの特異性を求めている観光客にとってはそれを掴みづらく成っている。またバリの文化やコミュニティ、環境を破壊している。これらの問題があるからバリ哲学と観光の結合は必要となってくる。
THKとSKの観光への導入はバリの観光の多様化を促進する。地元の会社がTHKとSKの元で動くにはそれなりの鉄則や政策が必要だ。7つの村での研究の結果、THKやSKによる地元の知恵(文化や生き方)の推奨は地元のコミュニティーの強化や、田舎の観光事業の推進に作新することがわかった。また持続的な観光開発は他にも田舎の多様的な魅力を活用することにより成し遂げられるとする。例として、レジャー施設への移動手段や安全性の保証、教育による多言語の使用などが挙げられる。田舎の観光地化にはやはり地元コミュニティがその特異性を活かし、THKとSKにそった観光開発が必要となってくる。
感想
CHJやBECの活動を行っていると、バリ島をどうしても一つの大きな観光地として見てしまい、ミクロ的な考えが抜けてくる。しかし、観光客の増加によりゴミ問題などが顕著になっている一方、田舎では観光客がこないため、都市部との所得の格差などが問題となっている。そこで地元コミュニティの強化やTHKやSKバリューの要素を取り入れた観光開発を行うことにより人々が求めている、特異的なバリの文化をいまだ体験することができる。今後この価値観をどれだけ表に押し出せるかが、バリの田舎の所得の増加に関わってくる。
【書籍】
dancyu 2020年 3月号
皆さんは「dancyu」という雑誌を知ってますでしょうか?美味しい食べ歩きや料理作りなど、食が好きな人から支持を集めている月刊誌なのですが、実は3月号にて日本酒特集が組まれていました!私たちインバウンド班は日本酒プロジェクトを進めていることもあり、ホットな内容で食い入るように読んでしまいました(笑)。しかもこれが結構ためになる内容で、外国人の好きなお酒の種類が掲載されているなど、インバウンド促進に繋がる要素が盛りだくさんです。是非とも読んでみてください。
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