2020・7
更新日:2020年8月22日
【日本語論文】足立浩一. (2015). バリ島における観光開発が伝統社会におよぼす影響に関する考察. 福山大学経済学論集.
インドネシアのバリ島は「神々の住む島」、「最後の楽園」などと称され、その多彩な観光資源で世界中からやってくる観光客を魅了している。そんなバリの観光は1920年代のオランダの植民地時代に始まった。圧倒的な武力を持ってバリを鎮圧したオランダは、世界中からの避難を浴びたが、これを避けるため、バリの伝統文化を保全する政策をとり、楽園バリのイメージを宣伝のために創出した。このような植民地化や観光開発は時とて伝統文化を破壊することがある。観光は変化をもたらし、弱体な文化を侵略・破壊し、均質的な文化へと俗化させてしまうとの意見もある。しかし、バリ島の観光開発は、伝統文化を破壊することなく、むしろ伝統文化の再構築に貢献した例だ。そこでバリ島の人々の伝統文化や社会的慣習に対する意識はどのように班かしているのかを分析するのが本校の課題だ。
バリ島の2013年のGRDPのうち観光関連産業の占める割合は29.89%と最大。また観光客数も2004年に100万人、2009年に200万人、2013年に300万人と年々増加している。またインドネシアのビザが取得しやすいことから中国人観光客が増加している。バリ島における観光開発と観光産業の発展は、かつて最も貧しい地域であったバリ島から極端な貧困者を減らすことに成功した。一方で、観光開発はバリ島の社会にとってネガティブな側面も併せ持つ。ホテル建設や宅地転用のために農地が失われ、貴重な観光資源である農地が年々減少している。また観光地化が進むことによって、バリの電乙週間や生活様式が薄れていくのではないかという懸念もある。そこで本項ではバリ人の観光と伝統文化に関する意識調査を行った。アンケートの結果、観光開発と観光客の増加は、バリ島の環境に少なからず悪い影響を与えているが、観光開発により、所得は工場し、若者の欧米化など、多様な文化の受け入れを促進した。また地域によっては海外のフランチャイズチェーンの出店や過剰に商業的な開発を制限することにより、地元の経済や人々が生き残ることを可能にしている。例えば、地域行政府の観光開発に対しての厳しい基準などが挙げられる。開発を侵略者として締め出すのではなく、開発に思慮深いアプローチを求めている。また異質な文化が流入しても、バリ島の良さはそれほど失われていないと若者は考えている。またアンケートの結果、若者が観光化したバリにおいて、これからもバリ島の習慣を守り、伝統芸能を継承していくべきだと言う強い意志が感じられる結果となった。
バリの人々は、経済的には観光産業に従事することを望み、観光化が進めばバリ島の伝統が失われることに危機感を抱いているものの、伝統的な社会様式や人間関係の中で暮らしていくことを望み、伝統芸能を保全し、次世代へ受け継いていくであろうことがわかった。
【英語論文】
Chi-KuoMaoCherng G.DingHsiu-YuLee(2010) “Post-SARS tourist arrival recovery patterns: An analysis based on a catastrophe theory” Tourism Management,Volume 31, Issue 6, December 2010, Pages 855-861
本稿では、2003年にアジアの多くの国々で猛威をふるったSARSが観光産業に与えた影響について調査している。SARSからの復興パターンを日本と香港、米国、台湾で比較し、最も適切な復興アプローチについて分析している。分析方法としてはカタストロフィー理論を用いて観光客が戻る回復パターンを実証している。結論として、復興政策の違いによって観光客数の戻り方が国ごとに変わっていたことが判明した。それぞれ4か国ともを対象として分けて分析していることで詳細な違いを見ることができた。政策としては、マスメディアを通して、旅行客の安全性に対する信頼感を改善するキャンペーンを行うことなどが良い例として挙げられる。
【書籍】
女2人旅 バリではじめる心の終活 岡本弥生 舛田有美 みらいパブリッシング
要約
この本はバリを舞台に女性2人で、心の終活をテーマに旅していく内容となっています。心の終活とは、親族に自分の遺品整理などの苦労をかけないようにするための一般的な終活とは違い、心を整理することを目的としての終活である。この本はバリ島の中で特にウブドに絞って書かれている。内容としては、伝統的な医療を行っているドゥクンと呼ばれる医師について、また現地の有名な日本人の占い師についてなどである。彼らのインタビュー内容も載っていて、観光雑誌にはないようなものとなっている。また、宗教などについてもバリ島のウブドを中心として紹介がされている。バリ島の神秘的な雰囲気に触れることで心を整理することができるのではないかと思う。
感想
私は、バリ島の中でもウブドが最も行ってみたい地域である。理由としては、芸術が盛んであること、また文化的側面でも重要な地域であると思うからだ。この本を読むことで、ウブドという地域の魅力を良く知れたと思う。さらに、ウブドと聞くと有名な美術館が存在することから、芸術ばかりを意識していたが、そのほかの伝統的な文化や慣習が根付いている様子も見られ、さらに興味がわいた。将来、ウブドに行ってバリ島の文化的側面を肌で強く感じてみたいと思った。
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