2020・8
更新日:2020年8月20日
【日本語論文】
観光地の魅力向上の要因分析
香月義之
同志社政策科学研究20巻1号75p-88p(2018)
本論文では、観光振興における魅力ある観光地域づくりに関して、観光地の魅力向上につながる要因を定量的に明らかにしている。持続的な集客を見込めない要因を観光地ブランドの明確化と予想し、ハーフィンダール・ハーシュマン指数を用いて分析している。ハーフィンダール・ハーシュマン指数は主に、特定の産業における企業の市場独占割合を示すため使用される値である。ここでは、分析対象を城址天守閣が存在する地域に限定し、登閣者数を観光入込客数の代理変数として従属変数に設定し、当該地における観光資源数と観光地ブランドの定量化として観光資源の「ハーフィンダール・ハーシュマン指数」を算出し、コントロール変数として当該地からの移動距離別の周辺地区人口を設定して、その関連性を分析している。分析の結果、観光資源の充実と観光地ブランドの明確化は、観光地における魅力向上に影響を与えることが定量的に明らかとなった。ブランド明確化のためにも、テーマをもって観光客の誘致を行うべきであるとしている。
【英語論文】Astawa, I. P., & Sudika, P. (2015). The impact of local culture on financial performance in property firms in Bali. APMBA (Asia Pacific Management and Business Application), 3(2), 106-115.
この論文はバリ島の企業を対象に売り上げなどの実績を調査している。この企業の売り上げに大きく影響を与えているものがその土地独自の文化である。バリ島には独自の文化が根付いており、これらと上手く共存できているかどうかが重要な点である。結果を先に述べると、バリ島の文化的な側面と上手に関わり共存できている企業の方ができていない企業よりも売り上げなどの実績が大きいことが分かった。このその土地独自の文化を理解することが企業にとって重要となってくる。調査で企業を対象に測った指標は以下の6つである。それは、祈りを行っているか、正直さ、一生懸命さ、社員の一体感、社内で社員がお互いを尊重しあい続けているか、を社員全体が理解しているかどうか、そして企業の売り上げ実績である。分析をした結果、上で述べた5つの要素は企業の売り上げ実績にポジティブな影響を与えていたことが明らかとなった。これは、バリ島だけで調べた結果であるが、どのような地域でもこのようなその土地に根付いた文化的側面を尊重して企業活動を行うことは、その企業の営業実績にプラスの効果を与えると思う。
【書籍】「バリ島芸術をつくった男」伊藤 俊治
本書は、近代におけるバリ「伝統」芸能の変容を、シュピースという個人を中心にまとめたわかりやすい本です。
バリには訪れた人々を惹きつけるケチャ・ダンスやバリ絵画などがあります。これらはシュピースというロシア生まれのドイツ人がバリ人と共につくったものなのです。彼は自ら絵を描き、写真を撮り、チャップリン、コバルビアス、ミード、ベイトソンらの案内役を務めています。そして、日本軍の爆撃により四十七歳で不思議な生涯を閉じました。最良のものをバリに捧げた男の人生をたどり、〈美と祝祭の島〉〈陶酔の島〉の秘密に迫っています。
本書を読んで、相次いだテロでバリ島観光は落ち込みましたが、一連のテロ行為を過度の西洋化・観光地化への「警鐘」とうけとめるバリ人が少なからずいるときいて、異質を徹底的に排除する一神教世界とは異なる「バリ・ヒンズー」の柔軟な生き方が、今も息づいていることを実感しました。つまり、バリの芸能・文化は、つねに時代とともに生きている、ということです。
バリに行く際はガイドブックなどより先に読んでおくべき本だと思います。
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